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乳酸性作業閾値にて、速筋繊維を使った練習が必要であると述べました。
 
なぜ、それが必要なのかを述べる前に、まず速くなるための要因を考えてみましょう。
 
これまでの研究により、一般的にランニングパフォーマンスを高める要因として大きなものは①最大酸素摂取量、②乳酸性作業閾値、③ランニングエコノミーがあげられています。
最大酸素摂取量および乳酸性作業閾値はこれまでに述べたとおりです。ランニングエコノミーというのは、いわゆるランニングの経済性といいフォームや体格などにより、走るときのエネルギー消費量が節約できることです。
また速く走るには、持久力の向上だけではなくスピードを向上させること、走りの技術(よくいわれるフォームの改善だけではなく、レース展開も)の向上も重要な要因です(この辺もおいおいやっていきます)。
 
そしてさらに、近年ではエネルギーを生成する能力を高めることが重要だとあげられています。この話が速筋繊維を使った練習をしたほうがよいのかという話につながっていきます。
まず、どうゆうことかというと、理科とかでミトコンドリアというものを聞いたことがあると思います。これが人間の身体においてエネルギーを作り出す器官であり、人間の持久力を決めるといわれています。
ミトコンドリアは遅筋繊維に多いため、エネルギーを多く作れる。そのため遅筋は持久的な運動に向いている。一方、速筋にはミトコンドリアが少ないためエネルギーを多く作れない。つまり持久的な運動に向いていない。また遅筋繊維はミトコンドリアにエネルギーを作るための糖質や脂質などを送るためのルート、毛細血管が多くあるが、速筋繊維は少ない。
つまり、このことからエネルギーを作り出すミトコンドリアの量と、そこにエネルギーの元を送るための道である毛細血管の量や太さを増やすことが持久力の向上のカギとなるわけです。
これまでは、遅筋繊維にミトコンドリアや毛細血管などが多く、それをさらに増やすためのLSDなどがあげられてきました。長時間運動を続けることにより、下半身に血がたまり、活性酵素などの血管新生因子などがたまっていくことで効果的にミトコンドリアや毛細血管などが増える。そうすることにより、エネルギーを多く作れ、長く速く走れるようになるといわれてきました。
 
一般人ランナーがやるならば、それでもよいでしょう。
しかし、トラックレースやマラソンで上を目指す方にとっては、速く走ろうとすると、前回でも述べたLTを楽々超えてしまう。このような強度って、速筋繊維を使う運動でもある。遅筋繊維はあくまでもそれほど大きな力を出せないので、速く走ることはできない。
そうすると、LSDをやれば速くなるっていうのも、ちょっとトラックのようなレースでは結びつかなくなる。なぜなら、トラックではOBLAは超える強度になってきますし、明らかに遅筋繊維だけではなく速筋繊維を使って走っているので。
マラソンでも、LTを超えるようなペースになってくると、トラックレースほどではないが速筋繊維を使うようになる。つまり、長距離において速く走るには速筋繊維と遅筋繊維の両方を鍛えないとダメなのです。速く走れないという人は、この辺の考えが抜けている方が多い。
 
そのため、練習から遅筋繊維だけではなく、速筋繊維のミトコンドリアや毛細血管を増やすような練習が必要になってくるのです。
速筋繊維におけるトレーニングは、遅筋繊維と同じです。シンプルに速筋繊維を使うようなトレーニングを繰り返す。
そうすることにより、ミトコンドリアや毛細血管を増やすことができます。(速筋繊維でのトレーニングで簡単なのはインターバル系の練習かな、この辺についての詳細はまた)
 
前回、速筋線維はTypeⅡbとTypeⅡaの2つに分けられていると述べました。TypeⅡaのほうで持久的トレーニングを行うことで遅筋繊維と同じ性質をもつことができる速筋繊維というのは、ミトコンドリアや毛細血管を増やすようなトレーニングをした結果とも考えられます。
つまり、見かけ上で速筋繊維のほうが多くとも、このTypeⅡaの性質を持たせるトレーニングをすることにより、長くても速く走れるようになるわけです。
 
日本トップレベルの練習や海外の選手の練習の内容を見ても、速く人は基本的にこの部分をおさえたトレーニングを行っていると思われます(トップレベルの方とはいかなくても、部活レベルでの速い人も同様だと思われ)。
もし、持久力はついているはずなのになかなか速くなれないという方は、この辺の考えが抜けているためだという可能性があり、かつ大きい(とくに、中距離系にはそれが顕著なような)。そのため、そのような方はこれから速筋繊維を使ったトレーニングを意識してみてはいかがでしょうか。
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今回は実際に乳酸をトレーニング時どのように扱うのかを考えていきます。
 
その前提としてまず、筋肉とエネルギーについて
以前、筋肉には基本的に速筋繊維と遅筋繊維があると説明したと思いますが、一応復習
 
一般的に
速筋はミトコンドリアが少ないが、発揮する力は大きいため瞬発的に優れている。
またTypeⅡともよばれています。そして速筋繊維を細かく分類するとTypeⅡbとTypeⅡaに分けられています。TypeⅡbは純粋な速筋繊維の能力ですが、TypeⅡaは持久的トレーニングを行うことで遅筋繊維と同じ性質をもつことができる速筋繊維です。中長距離では、この部分をトレーニングすることが重要です。
この部分についての詳細はまた別に。
一方、遅筋繊維では、ミトコンドリアが多く、発揮する力が小さいが、持久的に優れている。これはTypeⅠともよばれています。
 
これらの筋肉を使って力を発揮するためにはエネルギーが必要です。このエネルギーはATPであり、このATPを使うことにより筋肉を収縮させたりするのです。
 
速筋繊維では、ミトコンドリアが少ないため、有酸素系では時間がかかるため、大きな力を出すためにすぐできるATP-CP系や解糖系を主に
遅筋繊維ではミトコンドリアが多いので有酸素系を主に
というイメージをもってもらえればと思います。
 
さて、本題、どのくらいの運動強度から速筋繊維が使われ、遅筋繊維が使われるのか。
基本的に、私たちは遅筋繊維を使って、生活をしています。
なぜなら、それほど大きな力を使わなくても生活できる場合がほとんどだからです。
しかし、大きな力を発揮しなくてはならなくなった場合、すなわち運動強度が高くなるほど速筋繊維が使われはじめます。

速筋繊維が使われはじめるその指標の一つとして、乳酸があると言われています。
そこで、聞いたことあるかもしれませんが、ある運動強度の度合いを超えると急激に血中乳酸濃度が高くなる点があります。それがLT(乳酸性作業閾値)です。
血中乳酸濃度というのは、簡単に言えば、血液に乳酸がどれだけあるのかということです。
でも、ミトコンドリアが多いと、その乳酸もエネルギーとして使えるようになります。
それでも、その処理が追いつかなくなるときがこのLTあたりだと考えてもらえればと思います。つまり、LTを超えなければ遅筋繊維をメインに動員され、超えはじめると速筋繊維が動員されはじめるのです。一般の人がマラソンをするときには、このLTを超えないようにして走ることが明らかにされています。もし、このLTを超えると糖質が消費されるということだから、ばてやすくなります。

LTを向上させる要因としては、筋肉内にミトコンドリアを増殖させたり、ミトコンドリア内の酸素活性の増大などによりLTを高めることができます。
このLTは、最大酸素摂取量との絡みでもだいぶ研究されてきており、最大酸素摂取量の値でいうと50~70%2VOmax程度の強度であるともいわれています。
また、このLTは、最大酸素摂取量よりもコンディションに左右されにくい。LTは、最大酸素摂取量と比べ、トレーニングによって向上する余地が大きいため、しっかりトレーニングを行うことによりLTの向上は期待できます。
 
しかし、これ一般人としてはLTでも十分な強度になるのですが、上を目指す競技選手にとって、LTのペースはいいのかというと、そうでもないという話もあります。上にあげた50~70%2VOmaxは一般人という話であり、競技選手では最低でも85%2VOmax程度ともいわれています。
ましてや、トラックにおいては100%2VOmaxとかざら。そうすると、完全にLTは超えてしまう。(一応、誤解のないように言っておきますが、LTと最大酸素摂取量の関係はあくまでも相関関係の範囲内です)

さて、ここでLTを超えた先に、もう1点さらに血中乳酸濃度が急激に高くなる点があります。その点をOBLA(血中乳酸蓄積開始点)といいます。もちろん、LTを超えた点なので、速筋は動員されています。
そして、LTは1mol~3molとか乳酸が蓄積し始める点など現在の研究では定義が残念ながらまだあいまいとなっている一方、OBLAのほうは定義が定まっており、4mol地点であるとされています。(ちなみに有名なジャック・ダニエルズの本での閾値もおそらく、OBLAを指していると思われ)
つまり、トラックをメインにしている人や、さらに上を目指す人は、速筋がしっかり動員されるOBLAを意識したほうが良いともいえます。
 
感覚的な話で言うと、LTは少し呼吸が乱れるけど、我慢すれば鼻で余裕を持って呼吸出来るくらい。
OBLAは我慢しても口での呼吸を必要とするけど、特にペースダウンはしないくらいです。
 
次回は、なぜ速筋を使った練習をしたほうが良いのかを説明していきたいと思います。
  
また、母数が少ないので、一般化にはされないのですが、OBLAのペースについて研究されたものがあるので、参考程度にのせておきます。

5000mのベストタイムをもとに考えたものです。
こんな感じです。
5000m÷ベストタイム=○m/min=100%のスピード
92.5%速度○m ×0.925≒●m/min
60秒÷●m/min×1000=の結果がOBLAのタイム
たとえば16分がベストの人の場合
5000m÷16分=312.5m/min=100%のスピード
92.5%速度312.5m ×0.925≒289m/min 
つまり1km3分28秒がOBLAの出現する速度
 
だいだい5000mのレースペース+15~20秒くらいです。
今回は乳酸に関する話です

乳酸は、疲れの素:疲労物質、無酸素運動の時にたくさんできる老廃物
そして、よく耐乳酸トレーニングとか、乳酸に耐えるとか言われていると思います。
 
しかし、実は違います。ちゃんと、勉強している方は知っているかと思いますが乳酸はエネルギーとして使えるものです。ここ数年でだいぶ浸透してきたと思われますが、所々まだこの部分について誤解されています。
たとえば時々、陸上の中継、マラソンの中継を見ていても指導者やトップレベルの選手であった方がそのことについて解説したりしていますが、まだまだ以前からの考えがまだ根強く残っているなぁとも感じていました。
800mや1500mをメインにしている方はおいても同様です。そこで今回、ここを読んでいただくことによってちゃんと認識し直していただければと思います。

以前、解糖(乳酸)系にて、糖質を分解されると、ATPを作り出せると同時に乳酸も生じると述べました。ちなみに脂質を分解する時は、乳酸は生じません。
ATPを作り出す過程が違うからです。脂質の場合には、運動など必要な時に、遊離脂肪酸(FFA)とグリセロールに分解され、血中に放出されます。そして、その中でFFAは筋に取り込まれ、筋肉内のミトコンドリアでATPが作られるのです。
さて、糖質を分解するとき、ATPを作り出したあと、さらに糖質はピルピン酸になりミトコンドリアへ移動します。ミトコンドリアはエネルギーを作り出す反応の場所です。ここで、エネルギーとなるATPが生産されます。(ここで、酸化反応といって、酸素を使って糖質や脂質からエネルギーを作ります。)
しかし、糖質が分解され、ピルピン酸になるのですが、ミトコンドリアへ運ぶのには限界があります。つまり、糖質が分解された量が多いほど、ミトコンドリアで反応が進まなくなります。そして、その過剰になった分が乳酸なのです。
このことから、わかるように酸素がないから乳酸ができるのではなく、糖質を分解しすぎたために、過剰になった分が乳酸となるのです。
一言で言うと、こんな感じでしょうか。

糖質の分解量>ミトコンドリアでの処理量=乳酸ができる。

そこで、乳酸は酸であることから、人の身体は酸性になるため、乳酸ができると、そのまま老廃物になって疲労物質なんだとか、無酸素系運動の後に血中乳酸濃度が高まって乳酸がいっぱいたまってる=乳酸は悪いものなんだ
というように、以前まで言われていました。
(血中乳酸濃度は、血液の中で乳酸が作られる量と使われた量との差で決まります。簡単にいえば、糖質の分解量が多いと、乳酸の量が多くなるのでそれだけ血中乳酸濃度は濃いということですね)

しかし、この部分が勘違いされていて、乳酸は弱酸性でありますし、乳酸はエネルギーとして使うことができるということを忘れていたのです。
また、マラソンにおいてよく後半に乳酸がたまって走れないんだといわれていますが、マラソンをすると糖質が枯渇してしまうため、乳酸を生成するための材料がなくなるため、乳酸を作れなくなります。このことからも、乳酸がたまって走れなくなるというのもおかしな話なわけです。

では乳酸はどこで使われるのかというと、ミトコンドリアの多い遅筋繊維や、心筋(心臓の筋肉)で多く使われます。
筋肉には速筋繊維と遅筋繊維があって、前者は運動強度が高い時、後者は運動強度が低い時に主に使われると以前、説明しました。

まとめると
速筋繊維には、糖質が多いが、ミトコンドリアが少ないため、糖分解が進むと、乳酸ができやすい。
遅筋繊維や心筋はミトコンドリアが多いため、その乳酸を多く使われる。

つまり、速筋繊維でできた乳酸は、主に遅筋繊維や心筋で使われるということです。
速筋繊維のミトコンドリアでも使われますが、そのミトコンドリアの数が少ないので。

メカニズムとしてはこんな感じになるのかな。
まず、運動強度が大きい時、ATP-CP系の後、解糖系で糖質を分解してエネルギーを作り出す(基本的に陸上の走系だと最低でも解糖系までいきます)。そうすると、糖質の分解量が多すぎたとき、その超えた分が乳酸となる。
この乳酸が、ミトコンドリアの多い遅筋繊維や心筋に回ってくる。そこのミトコンドリアで、乳酸をエネルギーにする代謝が起きる。そこのミトコンドリアで、乳酸をエネルギーにする代謝が起きる。
具体的には、乳酸は遅筋繊維や心筋に回るだけではなく、遅筋繊維でのミトコンドリアで酸化反応が起き二酸化炭素と水に分解され、その時にまたエネルギーが作り出されるのです(ピルピン酸に戻って酸化反応が起きることもある。この辺の話、ここで説明するには難しすぎるので、それに関する専門的な本を読んでみるとよいです)

と、そのようなことが身体の中で起こっているわけです。よく言われる乳酸がたまって身体が重い-っていうのは、乳酸ができる量がこのエネルギーにする代謝の限界を上回っているのではなく、エネルギーが枯渇しているか、何らかの要因で疲労していると考えられます。その辺は競技によっても異なります。
ここで言いたい重要なことは、乳酸は悪いものではなく、人間にとって大切なエネルギーとなる代謝物質ということなのです。
 
プロフィール
HN:
やぎ
性別:
非公開
自己紹介:
陸上歴10年目のものがこれまでの経験、知識に加えて学会などの情報をまとめたものを陸上理論としてメモしておくブログです。
この世には常識とされていたものは非常識、また非常識とされていたものは常識となっています。それも含めいろいろ考察していくつもり

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